S.S.様から、頂戴した下記ご質問に対する私の考えを述べます。
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●S.S.様からのご質問
(10月13日に頂戴したメール)
件名:アドバイスお願い
S.S.様、
> いつも拝読しています。
> ありがとうございます。
>
> 学び方のうまい人,下手な人,
> どちらも学ぼうという意思はそこにあるわけですよね。
> 学ぼうという思いのない人に何かを伝えなければならない,
> というときには,いったいどうしたらいいのでしょう。
>
> 高校の教員ですが,今年度赴任した学校で,
> 勉学意欲のほとんどない生徒の割合が
> たいへん高く,四苦八苦しています。
>
> 学ぶ気持ちのない人にいかにその気持ちをかきたてるか,
> もちろんそれが仕事ですが,どうか,アドバイスを
> お願いします。
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「学ぶ意欲を高めるには?」
●この問題を考える場合、様々な要素が関わってくると思います。
・本人(生徒)
・伝える側(教員)
・属する組織(学校)
・取り巻く環境(地域、行政、)
などなど。
その中で、今回は、「伝える側」に絞って、考えてみます。
●まず、読者の方から頂戴したご意見を整理すると、2つに
大別できるのかな、と思います。
「学ぶ意欲を高める」には、
1)相手を認める(ほめて、「成功体験」をつませる)
2)伝え方に工夫をする
という2つが必要である、ということです。
●次に、読者の方の意見もふまえて、私の考えを下記3つの
観点から述べます。
1.伝える内容(What)
2.伝える方法(How)
3.伝える人(Who)
1.伝える内容(What)
学ぶ意欲を高める内容は、「おもしろい」内容に尽きると思います。
では、「おもしろい」内容とは何なのか?
私は、2つあるのかな、と考えています。
1)現実社会とのつながりが分かる。
2)新しい世界を知る。
1)現実社会とのつながりが分かる、とは「なるほどー、
だからそうなんだー」と勉強した内容と、現実とのつながりが
分かる、ということです。
私の例で恐縮ですが、アメリカの大学で学んでいたとき、私に
「学ぶことのおもしろさ」を教えてくれた先生が2人いました。
一人は、世界史の先生です。彼は、昔のことを教えながら、
それが、今の私たちの社会にどうつながっているのかを理解
させようとしていました。
何故、アメリカ南部では、人種差別の問題が根深いのか?あの旗の
意味はなんなのか?など。自分達の身近にある話題を、
世界史に結び付けて教えてくれました。
人にとって、一番関心があるのは、自分自身です。
「それが、私にどう関わってくるの?」ということをいつも考えています。
おそらく「勉学意欲のほとんどない」生徒達は関わって
「それを勉強して、何の役に立つの? 自分達とどう
くるの?」という疑問を持っているのではないでしょうか?
正直、学校教育で教える内容は、実社会で即役立つ内容と
いうのは、少ないのかもしれません。
それでも、今学んでいる内容が、現実社会とどうつながって
いるのか、どうつながっていくのか、を示すことができれば、
「おもしろいなー」と感じさせることができると思います。
2)新しい世界を知る、これは「へー、そんなこともあるんだー。」
と、違う世界を知る「おもしろさ」です。
自分が当たり前と思っていたことがそうではない。
全く違う価値観をもった人たちがいる。など。
私に「学ぶ楽しさ」を教えてくれた、もう一人の先生は、人類学の
先生でした。
彼は、アメリカ人、あるいは、日本人、など、いわゆる「先進国」
の人間とはちがった価値観をもつ人々について色々と教えてくれました。
アフリカの原住民、アメリカンインディアン、アジアの少数民族など。
「へー、自分達だけが正しいとかじゃないんだなー。
いろんな価値観があるなー。」と非常におもしろかったのを覚えています。
自分の知らない世界を教えてくれる、これは、生徒にとって非常に
「おもしろく」もっと知りたい、学びたい、と学ぶ意欲を
高めるのにつながるのではないでしょうか?
2.伝える方法(How)
「伝える内容」はおもしろくても、「伝え方」が下手では、
おもしろさも半減します。
では、おもしろい「伝え方」とは何なのか?
私は、五感を活用できるような「伝え方」が良いのでは、と考えています。
五感を使った「多重知能の理論」に基づく「伝え方」
「学び方」は、以前ご紹介した書籍「学習する組織の10ステップ」
または、その著者が書いた「統合学習」に関する本
「エブリデイ・ジーニアス」に書かれていますので、詳細は省きます。
私の経験の範囲ですと、学校教育では、主に「言葉」「数字」
といった「文字情報」を、先生の説明、板書、教科書といった
手段を通して、伝えています。生徒は、主に「目」と「耳」、
たまに「口」(音読や英文を読む、など)を使って、学習します。
これらは、主に、「言語的、数学的な学び方」であり、「絵」
などを使った「視覚的な学び方」や、「体」を動かす
「身体的な学び方」ではありません。
数学とかの授業で、どうやって「絵」や「体」を使って、教えるのだ?
という声があがるかもしれませんが、工夫次第で出来ると思います。
アメリカの大学での、世界史と人類学の先生は「教科書」ではなく、
「雑誌」や「新聞」の記事、「映画」「TV」などを教材と
していました。授業の中では、学生に「演技」をさせたり、
「歌」を作らせたりと、様々な工夫をしていました。もちろん、
歴史的事件があった場所での「体験」学習もしていました。
現在、日本の企業内教育でも、受講者が座ったまま、講師が前で
話すスタイルの研修は「座学」と呼ばれ、敬遠されています。
講師の話を聞くだけなら、しかもそれが書いてあるテキストの
内容を読み上げるだけなら、本を読んだり、ウェブで
勉強すればよい、ということです。
私達、研修の企画、実施担当者も、S.S.さんのように、いかに、
参加者に考えさせるか?あきさせないか?おもしろいと
感じさせるか?を常に考え、工夫しています。
もちろん、属する組織によっては、伝え方の工夫が歓迎されない
ところもあるかもしれません。
しかし「おもしろい」と感じさせる「伝え方」をしなければ、相手に
「おもしろい」と感じさせ、学ぶ意欲を高めることは出来ないと思います。
3.伝える人(Who)
なんといっても、「伝える人」自身がおもしろがって、
楽しんで伝えることが一番大事ではないでしょうか。
「この内容は伝えたい。知って欲しい。知ると世界が変わるよー。
知らないと損。おもしろいぞー。」
前に立っている人自身が、伝える内容、伝え方を楽しんで、
おもしろがって伝えれば、それは相手に伝わります。
企業研修の例ばかりで恐縮ですが、前に立っている「インストラクター」
「講師」(最近はファシリテーターなどと呼ばれることが多いですが)が、
楽しんでやる研修は、参加者も楽しんでいます。
逆に、「仕事だから、しょーがない」という気持ちで挑んでいると、
当然参加者にもそれは伝わり、全体の参加意欲は下がってしまいます。
以上、私の経験の範囲で恐縮ですが、「学ぶ意欲を高めるには」
1.おもしろい内容
2.おもしろいと感じさせる伝え方
3.伝える本人が、おもしろがって、楽しんで伝える
という3つが必要だと思います。
●最後に、今回貴重なご意見を下さった読者の皆さんに感謝します。
そして、なんといっても、S.S.さんに感謝します。
S.S.さんのように、真剣に教育のことを考えている方が、
教育現場にいる、というだけで、非常に心強く思います。
今回の内容が、S.S.さんのご参考になることを願っております。
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